複数の受託者で家族信託を管理するリスク
家族信託における受託者を複数設定することは、管理の負担を分散させるというメリットがある一方で、いくつかのデメリットも考慮する必要があります。受託者が複数いる場合、受託者間での意思決定の遅延は、特に考えなければならない問題となるでしょう。全員の意見が一致する必要があるため、一つの決断を下すのに時間がかかり、緊急を要する事案に迅速に対応できなくなる可能性があります。例えば、投資や不動産の売却といったタイミングが重要な決定において、意思決定の遅れは大きな損失をもたらすことがあります。
受託者が複数いると、連帯責任によるトラブルが起こる可能性があります。すべての受託者は信託財産の管理に関して共同で責任を負うため、一人の受託者の過失が他の受託者にも影響を及ぼすことがあります。たとえば、一人の受託者が投資に失敗した場合、その損失は全受託者が共同で負うことになり、個々の受託者に予期せぬ負担を強いる可能性があります。
コミュニケーションの複雑さも無視できないデメリットです。受託者がそれぞれ異なる意見や専門知識を持っている場合、意見の調整に時間がかかり、結果的に信託の管理が滞る可能性があります。複数の受託者間で情報共有や意思疎通を図る際に生じる誤解や対立は、信託の目的を達成する上での障害となることもあるのです。
家族信託を設定する際に、受託者を複数設定する場合は、これらのデメリットを十分に理解し、適切に対応することができれば、信託の効果的な管理につながります。信託設定時には、受託者間のコミュニケーション方法、意思決定プロセス、リスク分担の方法を明確にすることが重要です。また、専門家のアドバイスを取り入れることで、受託者の複数設定に伴うリスクを軽減し、信託の目的を効果的に達成することが可能になります。